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誕生の記 
2012-05-27 Sun 01:27
29歳の頃

 予定日を過ぎること2週間。
 今日こそ出るぞ!!とフェイントをかけ続けてきた我が妻から職場に電話が入る。いよいよ明日らしいということで休暇をとり翌日病院に着いたのが午前9時ごろであった。

 出産は立ち会いなので分娩室へ向かうといきなりご婦人の悲鳴が僕の耳に飛び込んできた。隣の分娩台で今、まさに別の妊婦さんが出産を迎えるところなのであった。数秒おきに唸り声と悲鳴に近い声が聞こえる。その声に僕はビビり、一瞬立会いを「やめようかな ボク・・・」と思うほどであった。
 
 しかし、その5分後には元気のいい産声に変わり、お母さんの泣き声も聞こえてくる。カーテン1枚隔てた隣のベッドで思わずもらい泣きの我が夫婦。ちなみにこの赤ちゃん、9月9日9時9分生れであった。とにかくおめでとう!

 さて、一方我が妻、この出来事にやや興奮気味であるが、看護婦さんの話によると出産は今日の夜ということである。
 
「うむ、夜か、まだ十分に時間はある、心の準備をして然るべき瞬間に備えねば・・・」
 
 と心に思う間もなく陣痛促進剤が効き始めてきた。看護婦さん曰く
 
「ひょっとすると午後2時ぐらいになるかもしれませんね」
 
 いきなり半日も短縮されては困る。こちらとしては我が子の生まれる瞬間の感動を十分に表現せねばならぬ。父としてはその瞬間に名言の一つも残さねばならない。それがいきなり半日も短縮されては心の準備ができぬ。しかし
 
「うむ、2時か、4時間ほどある、腹ごしらえをして然るべき瞬間にそなえるべし」

 と考えていたところ、思う間もなく陣痛の間隔が短くなってきた。看護婦さん曰く

「これは・・・すぐかもしれません」

 ちょっと待ってくれ、さらに4時間の短縮だ、現代の医学はどうなっているのだ!!

 というわけで、誕生の感動に名言を残すはずが「どうしたらいいの・・・ボク・・・」という状態になってしまったのである。

 さて、陣痛が始まって2時間、いよいよ出産が近付いてきた。陣痛の間隔が短くなり傍で見ていても結構辛そうである。しかし、我が子はなかなか出てこない。その時、子供の心拍数を示すデジタルメーターが急に低い数値を示し始めた。と同時に助産婦さんが「赤ちゃんが苦しんでるわ」とのたまわれた。

 どうやらへその緒が首に巻きついているらしい。さらに心拍数が落ちると分娩室はパニックになった。お医者さん3人に看護婦さんが7人ほど僕たちをとりまく、ドラマならばさしずめ「ジャーン!」とマイナーコードのピアノが流れ、重苦しい場面だ。僕もあせった。

(ちょっと、もしかしてどうにかなっちゃうのかな・・・)

 と不吉な予感がし、しかも何もできず、妻の手を取り現状を見つめるばかりである。結局、自然分娩は無理ということで引っ張って出す「吸引分娩」なる方法を取ることになった。手っ取り早く言うと、トイレのつまりを直すあのスッポンという類の器具で赤ん坊の頭を吸引して引っ張り出すのである。

 さあ、いよいよクライマックスの瞬間がきた、一方で吸引し、もう一方でおなかをぐいぐい押して押し出す、この時が一番すごかった(大丈夫かなぁ)という気持ちでいっぱいになる。
その時だ

「出た!」

 僕はこの目で誕生の瞬間を目にした。スルっという調子で滑り出てくる感じである。しかし、うまれても産声をあげない、あとで聞いたが仮死状態ということだ。僕の頭の中にはテレビでよく見かける、赤ちゃんの産声とともに周りから「おめでとう、元気な男の子ですよ!」などといって、赤ちゃんを高くかかげて見せてくれてみな涙ぐんで、よかった、めでたし、という場面を想像していたのだが、どうもそうではないらしい。我が子はどこかに連れて行かれ男か女かもわからない。
 
 ふ・あ・ん・・・

 しかし、さすがは我が子だ、3分後に生き返ったのである!性別も女の子と分かり以後は元気に育っている。へその緒が首に二重に巻きついていたということでスリルを親に味わわせてくれたが、何かしらこうした危険はつきものなのだそうだ。

 しかし、この娘不幸を二つ背負っていた。ひとつは僕に似て目がちっちゃい、そして、もう一つは頭を吸引したため、頭の形がナスビのようになってしまったのだ、よく産まれた直後の子はおサルさんみたいといわれるが、僕の第一印象は(あっ、ナスだ・・・)というものであった。このまま直らなかったらどうしよう・・・(おかげさまで直りました)

 しかし、出産に立ち会ってつくづく「女の人は大変だなぁ」と思った。残念ながら父親の子供に対する愛情は母親のそれにはかないそうにない。

 当時、学校の先生をしていた僕は、翌日の授業でこの様子を事細かに生徒たちに話した。こんなにいい性教育はないと思ったからだ。すると、その日の学級日誌にこんなことが書いてあった。

「今日、先生の赤ちゃんの産まれる話を聞いた。当分はナスが食べられないらしい」

 なかなかセンスのあるヤツである。


 さて、こうして生まれた娘はまもなく二十歳になる。
 君はこんなふうにして生まれたのだ。

 時の流れは早いものである・・・



 
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