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第三校舎の思い出
2012-03-31 Sat 23:07
6歳の頃

 3月は卒業の季節、そして4月は入学の季節である。何となく懐かしい思いに駆られて小学校の卒業アルバムを引っ張り出してみた。
 不思議なもので眺めているうちに昔の光景がぼんやりと蘇ってくる。

 僕の小学校の入学だから今から40年以上前になる。入学した小学校は今思い返すととても趣のある校舎だった。
 まずは木造、平屋ではなく2階建てだった。そして、校舎が3つに分かれていた。第一校舎、第二校舎、第三校舎、これら3つの校舎がほぼ平行に並んで渡り廊下でつながっていた。
 
 第一校舎は職員室や校長室があり何となく一番偉かった。ピッカピカの一年生は当然第一校舎の1階だ。建物も三つの校舎の中で一番重みがあり、ウルトラ警備隊で言うとウルトラホーク1号という感じだ。やっぱり1号はかっこいい。
 
 第二校舎には特別な施設が集まっていた。宇宙ステーションにも行けるウルトラホーク2号ということになる。
 確か給食室があり、昼になると各クラスの給食当番が一斉に集合した。エレベーターもワゴンもない当時はすべての食器、おかず、パン箱などを生徒が運んでいた。それでも力のない1年生だけは教室の前まで給食のおばさんが運んでくれていた記憶がある。
 
 第三校舎は独特の雰囲気だった、渡り廊下で第二校舎を抜けるとふっと風景が淋しくなり、うらぶれたような木造校舎が現れる。学校農園に囲まれるように佇むこの校舎はひとつだけ特にローカル色が濃く、昭和40年代ながら、雰囲気は昭和20年代という趣であった。ウルトラ警備隊の中でもウルトラホーク3号はマニア度が高い。

 1年生の行動範囲は非常に狭い。校門から第一校舎までが生活の90パーセントを占める。残りの10パーセントは体育で移動する校庭や体育館というところだ。1年生は特別教室もまだ使わない、音楽も図工もすべて教室だ。
 二学期になると練習を兼ねて一部の食器を給食当番が第二校舎まで取りに行く、これですら1年生にとっては立派な冒険である。
 
 また、冬になると教室のストーブに入れるコークスを運ぶストーブ係というのも体験することになる。バケツいっぱいのコークスと点火に使う「ネオライター」という発火剤をストーブ質というところまで二人係で取りに行くのだ。小さなスコップでバケツにコークスをいっぱいにしたあとで、主事のオジサンに見せて「ネオライター」をもらい教室に戻ってくる。
 低学年は運ぶだけだが、4年生以上は教室での点火までも係が行う。新聞紙にマッチで火をつけ、「ネオライター」に点火する。素早い点火にはそれなりの技術が要求されこの係はなぜか人気があった。

 さて、そんな1年生の僕が月に一度だけ第三校舎に行くときがあった。
それは、毎月の決まった日にここの下駄箱のある昇降口で学研の学習誌(かがく・がくしゅう)の販売があったのである。毎月同じおばあちゃんが午前中いっぱい机に座り小さなお店を広げる。
 
 そんな場所に僕らは現金をもって休み時間に買いに行くのだ。1年生の僕にとってはちょっとした勇気が必要だった。

 まず、第三校舎は遠い、1年生だと片道2分程度はかかるのだ。往復で4分、休み時間は10分だから行って買って帰ってくると5分程度かかる、時には長い列ができる時もあった。おばあちゃんの接客と販売はゆっくりだ、時々おつりを間違えたりして列が少しも短くならなかったりする。おばあちゃんは白髪でおとぎ話に出てくるちょっぴり怖い妖怪のようにも見えた。僕はこの販売が夕方や夜でなかったことに心から感謝した。

 それでも子供心に

「つぎのじゅぎょうまでにきょうしつにかえれなかったらどうしよう・・」
「わざとおそくして、ぼくらをこわがらせているのかもしれないぞ・・」

 などと1年生の心は千千に乱れるのだ。

 次に第三校舎の醸し出す独特の雰囲気だ。僕の学校にも学校にはよくある七不思議的な怪談話が伝わっていた。元々が軍の火薬庫の後に出来た学校だったためこうした怖い話には事欠かなかった。実際に校庭の隅から戦時中のものと思われる人骨が出てきたりしたこともあり、軍人さんが歩いている姿を見ただとか、夜中にピアノの音が聞こえてくるだとか、トイレの戸が開かなくなり、下から血だらけの手が出てくるだとか、そうした類の話が山ほどあり、そうした「学校の怪談噺」の舞台の大半をうらぶれた雰囲気のこの第三校舎が担っていたのである。

 さらにはお金だ。この日だけは小学1年生は大金を所有している。といっても250円程度だが、幼き少年には十分な大金である。これを落としやしないかとビクビクしながらポケットをまさぐり、少年は第三校舎を目指すのであった。

 僕はドキドキしながら、でもちょっぴりスリルを楽しみながら、毎月一回この第三校舎に向かった。

 そんな第三校舎は僕が5年生の時に取り壊されてしまう。第一校舎と第二校舎も同様だ。老朽化による全面新築新校舎計画の実施である。
 新しく完成した校舎は全国から先生が視察に来るほど近代的なものであった。教室も廊下もトイレもとびきりきれいだった、給食はゴンドラエレベーターで3階まで上がってくるし、ストーブはすべてセントラルヒーティングに変わった。でも、今思い返しても思い入れも愛着も全くない、あの古い校舎のままで卒業したかった。

 もし、僕が何かの拍子に巨万の富を手に入れたら、学校を作りたい。私立学校の理事長だ。そして、広い敷地に迷路のような木造校舎を三棟建てるのだ。木も鬱蒼と蔽い茂らそう、そして、1年生の教室から5分はかかるであろう第三校舎の片隅で月に一度学習誌の販売を行うのだ。販売時間は授業の終わった放課後から日が暮れるまで。

 僕は背広を脱いで白髪のおじいちゃんの売り子に扮する。子泣きじじいのイメージだ。ドキドキしながらやってくる1年生にわざとお釣りを間違えながら本を渡そう。そして、心の中で1年生にエールを送るのだ。

(頑張って大きくなれよ、この校舎は6年間君たちをドキドキさせるぞ)
(君たちが卒業するまで決して壊すこともない、ちょっぴり怖い思いもしながらいっぱい思い出を作るのだ)

 安全というものには代えられないのだとは思うが、それでも全国に現存する木造校舎が少しでも壊されずに残っていくことを切に願いたい。


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