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実にささやかで何気ない風景
2014-09-23 Tue 02:01
 星新一の小説に「愛用の時計」というお話がある。

 長いこと大切に使っていた愛用の時計が、とある人生の大切な瞬間に初めて狂ってしまう。
 主人はその裏切りに怒り悲しむが、実は・・・

 僕の好きな話の一つである。

 腕時計が止まってしまった。
 長年掃除もせずに働かせ続けたのが原因か、はてまた単なる電池切れか。

 朝の出勤時に止まってしまい、どうしようか思案したのだが、とりあえず100円ショップで購入した腕時計でその日1日は乗り切る。
 最近はこうした対処が可能だ。
 便利な世の中になったものである。

 僕の腕時計は特に高級なわけでもない。
 オメガでもセイコーでもましてやロレックスでもない。
 買えばせいぜい3000円程度のものだろう。
 昨今では修理に出すよりも新しいものを買ったほうが安かったりもする。

 しかし、取り換えるつもりはなかった。
 3000円程度の「ものだろう」と記したのは・・実は買ったものではないからだ。

 昔、中学校の先生をしていた時の教え子の結婚式に出席した際に引き出物としてもらったものなのだ。
 いわゆるカタログギフトではあるが、僕はこうした際に必ず毎日使うものを選ぶようにしている。

 モノというのは使ってこそ価値があると思うからだ。

 (高くついても修理して使おう)

 というわけで、僕は町の「時計屋」さんへ向かった。
 時計が壊れたとき、最近は家電量販店や百貨店の中にある時計専門店などに修理を依頼する人も多いと思う。
 すると、たいていは引換証とともに預かり修理となり、何日か後に取りに行くというパターンだ。

 我が家の隣の駅の商店街に昔ながらの小さな時計屋さんがあるのを知っていた。
 昭和の香り色濃く、いつ見てもお客さんがいるのを見たことがない。
 (こんなんで商売やっていけるのかなぁ?)
 などとよけいな心配をいつもしていた。

 今回、僕はそのお店を訪ねてみた。

 入口というよりは「玄関」といった風情の扉を開ける。
 やや薄暗い店の中には誰も見当たらない。

 「すいませーん」

 声をかけると奥の部屋からご主人が出てこられた。

 「これ、動かなくなっちゃったんですけど、電池切れでしょうか?」

 僕が時計を差し出すと、ご主人は無言で時計を受け取り、そのまま椅子に座った。

 そして、あの「片目」で挟む独特のルーペを使い、僕の時計を分解し始めた。

 僕はその様子を興味深く眺める。

 (職人さんだ・・・)

 分解が終わるピンセットで電池を取り出しテスターにかける。
 かすかにうなずく様子を見るとやはり電池切れのようだ。

 ご主人は新しい電池をピンセットでつまむと、丁寧な仕事で機械の中におさめ、最後にこれまたテレビドラマの中でよく見るように、大きめのスポイトのようなもので機械に風を吹きつける・・ほこりをとっているのだろう。

 そして、最後に小さな「はけ」のようなもので優しく機械をなぜると再び組み立てに入った。組み立てが完成すると仕上げに特殊な小道具で竜頭を巻き、時刻を合わせてくれた。

 僕は5分間のショートムービーの脇役になった気分で、この見事な「ショー」に見とれていた。

 「はい」

 その間約5分・・
 ご主人は終始無言だった。

 僕は心から感心してその様子を眺めていた。
 「無言」も決して不快なことなく、逆にわずか5分で動かなかった時計を生き返らせてくれたことに感謝した。

 こうした町の職人さんはきっと少なくなっているに違いない。

 (出来るだけ長く・・お店続けてほしいな)

 僕は生き返った腕時計にさわやかな気持ちになりながら秋の町の中に出て行った。



時計

時計職人







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ぜひ 観たいです!
きりぎりす さんへ

映画の話、興味深かったです。
紹介の仕方がお上手で結末が気になって仕方ありません(^^)
邦画が好きで洋画はあまり見ないのですが、ぜひ観てみたいですね。
ありがとうございました(^^)
2014-09-27 Sat 09:03 | URL | おのみちたかし #-[ 内容変更] | top↑
星新一の『愛用の時計』ですか?私も好きです。
主人公の“愛用”を通り越した…正に“愛情”を一身に受けた腕時計。
その愛に応えるべく彼女(時計)が取った行動とは…

それから捨てられない物ってありますよね。
ましてや教え子への思入れのある品ともなれば尚更です。

今回おのみちさんの記事を読みながら思い出される映画がありました。
ロバート・デ・ニーロ主演『ミッドナイト・ラン』(米国1988)です。
知っていますか?
劇中,壊れ掛かった腕時計に主人公が耳を当て,止まっていないかを確かめるシーンが頻繁に描かれています。
古い腕時計をなぜ使い続けるのか?
その理由を誰にも漏らさなかった主人公が,最後になって友情が芽生えた犯人に打ち明けるのですが…
(そりゃあ捨てられないわな。頑固なくせに純真なのね)
もし観ておられなければ一度ご覧になられてみては?
2014-09-25 Thu 12:24 | URL | きりぎりす #GaenHm5U[ 内容変更] | top↑
古きものは・・・
miss.key さんへ

懐中時計ですか・・いいですね。
僕は持っていませんが高級感やヨーロッパの宮中感もあって憧れてしまいます。
自分もついつい使い捨て文化にはまってしまい、特に傘などは100円で買っては捨てていくといった始末・・いけないですよね。
物を大切にという言葉にハッとさせられました。

古いものには「味」がありますものね。

コメントありがとうございました(^^)

ちなみに写真は「イメージ」です。
2014-09-23 Tue 20:01 | URL | おのみちたかし #-[ 内容変更] | top↑
ぱくっっっ
 食いつきました。時計好きです。機械式時計大好きです。懐中時計大好物です。
 時計の機械はそれ自体宝石の様ですな。実際ルビーがごろごろ入ってるんだけど。ダマスキーンも美しい絵画です。実際は素人が開けて見るのは良くないんだけど。
 時計職人の雑然として整然とした仕事場、ルーペとピンセット。暗い部屋と手元だけ明るいライトのコントラスト。存在自体が芸術です。しかし、最近そんな時計職人が次々姿を消しています。とっても残念です。私が以前頼んでいた時計屋さんも三年前に閉めました。次の時計屋さんを探すのに苦労しましたよ。(ただ売ってるだけの時計屋さんなんてのは私には論外なのです。)
 物は大切にしたいですね。電池さえ換えれば幾らでも使える時計がジャンクで投売り・・・なのはまだ良い方で、ゴミとして捨てられる世の中。たとえ高くついても直して使おうという気持ちが素晴らしいです。
 ところで、写真の時計屋さん、何処?近くなら行って見たい。
2014-09-23 Tue 08:23 | URL | miss.key #eRuZ.D2c[ 内容変更] | top↑

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