FC2ブログ
QLOOKアクセス解析
スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | top↑
その男 夜行性につき・・
2014-01-01 Wed 00:00
15歳の頃

 子供の頃憧れたものに「夜更かし」があった。

 今ではだいぶ変わったのかもしれないが、昔は子供の寝る時間というものが厳然として存在した。例えば、小学校の高学年ならば9時がそのラインだった。この時間までに夕食を食べ、風呂に入り、宿題を済ませ、寝床に入らなくてはいけない。

そこからは「大人の時間」で子供はふすまごしにテレビの音を聞き(時にはふすまのすき間から覗き見し)そしてぼんやりと思ったものだ。(いいなぁ・・大人は遅くまでテレビ見て・・)

 中学に入ると塾などにも通い始め、就寝時間も11時くらいになってくる。それでもやはり9時を過ぎれば外出できるわけもなく家の中でラジオを聞きながら過ごすのが常であった。

 今も夜の繁華街では少年たちが集まり、時には問題を起こしたりもしている、確かに社会的に見れば決して褒められたことではない、しかし、夜に出歩きたい気持ちはわかる。若者たる少年はこの時期ありあまるほどのエネルギーを持て余しているのだ。

 当時、僕も、特に夜9時を過ぎるとなぜか目がらんらんと輝き、無性に活動したくなった、まるで夜行性の動物である。友達と会って話すことが何よりの楽しみなのもこの時代の特徴である。

 こうしたフラストレーションも今ならば解消が可能だ。携帯がある、メールやラインもある、スカイプを使えばテレビ電話と同じだ。しかし当時はたった1台の黒いダイヤル式電話は居間の横の階段の踊り場にあるのだ。家族と隔てる障子一枚すらないのだ、そんなところで友達と気楽に話せるはずもない。

 僕は常に思っていた、あわよくば何とか夜の町に出かけてみたい、友達と話したい、遊びたい、しかし、出かける理由がないのだ。

「エネルギーが有り余っているので出かけてきます」

 これでは理由にならない。

「夜の風に吹かれたくて」

 窓でも開けなさい・・と言われるのがオチである。

「とにかく行きたいんじゃー!」

 その後の収拾が何ともめんどくさい。

 中学生が夜更けに出かけることは確かに危険だ、また、盛り場にでも入り込めばロクなことがないことは火を見るより明らかである。一般的な親ならば当然ストップをかけるのは当然のことだ。第一行く場所がない。今のようにコンビニがあるわけでもなく、夜9時の町で明かりがついているのは中学生には無縁の飲み屋かスナックの類だけである。

 しかしそれでも血気盛んな少年は夜の町の中に飛び込みたいのだ。

 こうした有り余る夜のエネルギーを何とか発散するべく、僕はまず家の外に一歩出てみることにした、家の前ならばさして怒られることもない。初めは「素振り」である。

 野球のパットを持ち出し、ひたすら素振りを繰り返す。夜風が気持ちいい。しかし、一週間もすると飽きてしまった。少年は卓球部だったのでラケットに持ち替えてもみたがこれまた一週間で飽きてしまった。

 次に画策した作戦は「ジョギング」であった。

「ちょっとトレーニングに走ってくる」

 何とも自然かつ健全な理由ではないか。僕は夜の町を一時間ほど走っては自宅に帰った。しかし、これもまた一週間で飽きてしまった。何しろジョギングがしたいわけじゃないのだ。夜の醸し出す何とも言えぬ興奮を仲間と過ごしたいだけなのだ。

 さて、中学校三年の時である、我が家に大きな転機が訪れた。家を改築するために半年間、近くの木造アパートに引っ越すことになったのだ。
 それはそれはもう古めかしいアパートで、昭和初期の建築、戦災をまぬがれ生き延びてきたという風情で伝説の「トキワ荘」を彷彿とさせる素敵な佇まいであった。共同玄関はもちろんトイレや洗面所までもが共同であった。廊下を歩くと床がミシミシと音を立てた。
 当然のことながらこのアパートには風呂がなかった。そしてそのことが僕に人生で最大の夜の社交場を与えることになったのだ。

 そこは・・「銭湯」である。

 当時僕には4〜5人の仲のいい友達のグループがいて、仲間たちはみな銭湯を利用していた。しかし、僕の家には内風呂があったため参加資格がなかったのだ。そこにきてこの「引越し」である。奇しくも引越し先はみんなが集まる銭湯にほど近い場所にあった。

「じゃ、銭湯に行ってくるから」

 少年は「銭湯」という大義名分と免罪符を一度に手に入れた。それからは日を空けず通いつめた。行けば必ずといっていいほど友達に会った。会えば湯船の淵に腰掛けてくだらないことを飽きずにしゃべったものだ。

 よくガールズトークと称して女の子達が他愛もないおしゃべりに興じているが、まさに当時のそれは「ボーイズトーク」である。学校での出来事はもちろん好きな女の子のこと、お互いの悩み事、そして来たるべく高校受験のこと、時には歴史の年号を書いた単語カードを持ち込んでクイズのように一問一答で問題を出し合う、こんなに頭に入る勉強はなかった。

 そのうちに時間帯も示し合わせるようになり、だいたい夜の9時から閉店間際の11時頃まで、時には帰りが遅いと叱られもしたが、それでも盛り場での夜遊びと違い、禁止となることはない、家の改築が終わるまでの半年間、僕は夜な夜な仲間たちとくだらない話をしながらそれはそれは楽しい時間を過ごしたのだ、湯上りにはみんなでフルーツ牛乳も飲んだ。

 この時の仲間とのつながりは僕の人生の中で大きな役割を果たしたといっていい。当たり前のことだが「一緒にいて楽しい」「一緒にいて気が楽」これが友達の何よりの条件だろう。教訓を垂れるほど偉くはないのだがこれは真実である。なぜなら、その証拠に数十年たった今でも彼らとのつきあいは続いているからだ、おそらく一生・・

 大人になった今でも僕は「夜行性」だ。こうした文章を書くのも決まって深夜である。今では長い夜を一人で楽しむ術がいくらでもある。テレビも、ネットも、DVDも、音楽も。

 でも、あの出かけてはいけない時間を子供なりに知恵を巡らせて出かけて行った思い出はいつまでも鮮明だ。不思議なもので「ダメ」と言われていることほど輝いて魅力的に見えるのはなぜなのだろう。
 そしてあの「銭湯」での半年間限定の仲間たちとの素敵な時間と空間、あれ以上に楽しいひと時にこれから先出会えるかどうかはわからない。


教訓・・人は「自由」を手に入れた瞬間に「束縛」という「魅惑」を失う。


夜の銭湯




関連記事
別窓 | 随筆 | コメント:5 | トラックバック:0 | top↑
<<下町文学散歩 | つれづれペンペン草  おのみちたかし | 箱根の山は>>
今年もよろしくお願いします。
ポールブリッツさんへ

筒井康隆は僕も大好きでした。ジュブナイルSFとして読んだ「時をかける少女」は本当に衝撃でした。今、趣味で書いている小説はかなり影響を受けています。短編集「にぎやかな未来」もお気に入り。超短編「到着」ご存知ですよね。
2014-01-04 Sat 23:16 | URL | おのみちたかし #-[ 内容変更] | top↑
わたしも夜行性中学生でしたが、友達とつるんで外へ行くのではなく、ひたすら学校の図書室から借りてきた本を読みまくることで夜を消費していました。

あの中学生の夜々に読破した「筒井康隆全集」全巻はわたしの血であり肉であります。
2014-01-03 Fri 19:19 | URL | ポール・ブリッツ #0MyT0dLg[ 内容変更] | top↑
同感!
Miss Key さんへ

今年もよろしくお願いします。
そうですね、仕事が忙しいときはとにかく寝たい!でもネットはなかなか寝かせてはくれない。
こんな「おもちゃ」ができるなんて子供の頃には思いもしなかったなぁ。
でもこの「おもちゃ」いろいろな人に出会わせてくれる魔法のおもちゃでもあります。

日頃の感謝の気持ちを込めて・・

お正月だし今日も夜更かしを楽しみます(笑)
2014-01-01 Wed 20:28 | URL | おのみちたかし #-[ 内容変更] | top↑
夜更かしは藤竜也と草刈正雄
 まったく、子供は早く寝にゃならんとは誰が決めた事なんだろう。きっと夜更かししたい大人が、邪魔で煩いガキンチョを態良く追い払う口実だったんだろうなと、姉が姪を連れて遊びに来るたび思う次第。
 わたしがガキンチョ(8歳未満)だった頃は夜は実に早くて、八時には強制的に布団に押し込まれたものである。でも、その後でみんなが見ているテレビが面白そうで(実際面白かったんだが)、そりゃ寝られる訳が無い。そこで頼み込んで何とか見せてもらったのがプロハンター。大人は良いなとつくづく思ったもんだ。ちなみに主題歌『ロンリー・ハート』は今でも色あせない名曲です。
 さて時は流れて勉強なんぞというものを仕入れてからは、寝たくても寝られない日々。そして仕事に就けば、やはり寝られない日々。常に眠いのに寝られない日々。散々遊んで疲れたら寝ちまうガキンチョが羨ましい。
 だったらネットなんぞいぢっとらんで寝たらいいのに。
 それは禁句です。
2014-01-01 Wed 09:49 | URL | miss.key #eRuZ.D2c[ 内容変更] | top↑
今年もよろしくお願いします。
あけましておめでとうございます。

昨年はブログを通して多くの方と知り合うことができました。たくさんのコメントや拍手ありがとうございました。

今年も恥ずかしながら、駄文、雑文を不定期に載せていきたいと思います。懲りずにぜひお越しください。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。
2014-01-01 Wed 00:35 | URL | 尾道貴志 #-[ 内容変更] | top↑

管理者だけに閲覧

トラックバック URL

FC2ブログユーザー専用トラックバック URL
| つれづれペンペン草  おのみちたかし |

検索フォーム

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。