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 「必殺学級委員選出法」 -ルーキー先生へ捧ぐ-
2017-04-09 Sun 01:36
学級会


 新年度が始まった。
 学校では新学期のスタートだ。

 今年もたくさんの新人先生がデビューしたことだろう。 

 
 かつて学校の先生をしていた。中学校の若手の先生にとってけっこう頭を悩める仕事の一つにクラスの委員や係の選出というものがある。

 委員や係というのは生徒にとってはかなり重要なポジションを占める。これは誰もが経験することであろう。様々な思いがそれぞれの生徒たちの胸中を行き交う。

○ オレ体育大好き、体育委員が生きがいだぜ。
○ わたし、人の世話をするのが向いているみたい、保健委員やってみたいな。
などの正統派

● 一番楽な仕事は何かな・・・掲示係がひまそうだな。
● 3年の二学期ですものね、生活委員をやって内申に書いてもらわなくちゃ。
といった打算派

◎ ねぇ、絶対に同じ係をやろうね、国語係なんていいんじゃない。
◎ 俺はあの娘と同じ委員会に入る、そして・・・・あわよくば、二人で一緒に帰ってウッシッシ・・・
といった人間関係重視派

 など、そこには生徒たちの夢や希望や打算が渦巻いている。大人ならば、妥協と譲り合い、時には根回しと貸し借りなどでうまく落ち着くのだがそこは中学生、時にはエゴむき出しの醜い争いが起こったりもする。こいつに経験の浅い先生は手を焼いてしまう。

 僕も慣れない新人の頃はずいぶん苦労した。どうしても決まらない不人気な仕事や、逆に競争率5倍などという人気職、40人もの生徒たちの希望を上手にまとめるのは至難の業であった。加えて「今週の金曜日の委員会までに決めるように」などとキツイ締め切りか必ずついてくるのだ。

 さて、そんな中で最も大切な人事は何と言っても学級委員である。担任が総理大臣だとすると組閣の上で一番慎重に選出されなくてはならない。
 内閣の人事ならば官房長官である、人選によっては内閣が倒れることなど簡単である、教育界ではこれを学級崩壊と呼ぶ。

 新人の頃、僕も最初はごくオーソドックスな選び方をしていた。
 しかし、どの方法にも一長一短があるのだ。

① 立候補
 メリットとしては何と言っても当人のやる気がある。上手くいけばこれほど頼りになる官房長官はいないだろう。まさに担任の片腕となって粉骨砕身働いてくれる。
 しかし実はこの選出法、常に大きな危険が付きまとうのだ。おちゃらけた奴が目立ちたくて手を挙げることや、自分の力を客観的に判断できずに自己啓発の意気込みで思わず名乗りを上げる者、さらには最悪のパターンとして、ジャイアンのごとき為政者を目指すヤツが、クラスや学校の支配までも視野に入れて立候補してくることなどがいわゆる昔の「荒れた」学校ではよく見られた。
 立候補した生徒を担任が無下に却下することもできず、若い先生は時々失敗することになる。その後の閣内運営は苦労の山だ。
  
 さらに、ここは政界と大きく違うところだが、誰も立候補者が現れないという事態が結構な確率で起こる。立候補ゆえに無理やり手を挙げさせることはできず、沈黙に包まれたいやーな時間と「明日までに決めなくちゃならないのに時間がないよー」という焦りの中で担任は苦しむことになるのだ。

② 推薦
 これまた一般的な選出方法だ。メリットとしては立候補の最後に記した沈黙の時間が避けられる点にある。デメリットとしてはいわゆる「押し付け」が生まれることだ。誰かを推薦することで自分が役から逃げるという策略を立てる者がいる。自分以外の誰かががやってくれるだろうという依存や、当然の帰結としてやりたくないのに推薦された場合には全くやる気のない官房長官の誕生も現実に起こりがちだ。

③ 投票
 一見、公平性がある。選ばれた生徒もみんなが名前を書いてくれたのだからという喜びや、やる気につながるというメリットもある。
しかし、これも慎重に行わないととんでもないことが起きる。一つは、いわゆる「人気投票」になりがちなことである。クラス一のイケメン君が実力抜きに選ばれる可能性は否定できない。
 次に派閥の力学である。以心伝心の根回しと共に組織票が当選を決めることが間々起こるのだ。最悪のケースとしては、クラスのいじめられっ子をターゲットに悪意の組織票が投ぜられ、選ばれて困惑する姿を見て喜ぶなどは崩壊したクラスの末期的な現象として一度だけ見たことがあった。

 僕の教師生活は16年間続いたのだが、この学級委員選出問題を自分なりに研究し、編み出した最善の方法を紹介してみたい。ここからは(あ、いつもですよ)真面目な内容です。もちろんあくまでも自分的に一番上手くいった方法ということなので誤解なきよう。

 悩める若き先生に捧ぐ 必殺「学級委員選出法」

1 初めに選出の大切さを説く。

 ベテランの先生に出来て、若い先生に出来ないことのひとつ。若い先生はこの前ふりなしに、何となく選出に入ってしまうのだ。生徒は人間だ、担任が真面目に語りかければ多くの生徒は必ず受け止めてくれる。そして、選出方法をしっかりと説明する、生徒に選ばせてはダメだ。この際、選出はクラス一人一人全員の「責任」ということを強調する。

2 白票を配り、男子は女子、女子は男子、信頼できる異性の生徒を3名ずつ書かせる。

 異性を推薦させることで先に挙げた悪意の組織票が比較的防げる、更には僕の感覚だが、人気投票に近い推薦をすると、その相手に票が集まらなかったとき、「自分は人を見る目がないのではないか」という無形の恐怖に駆られ、いわゆる正統派の名前を書く意識が強く働くようだ。結果として無責任な推薦が少なくなる(気がした)

 この時、推薦の理由を書かせる、いい加減なヤツを褒めるのは意外と難しく、ここでも無責任な投票行動を防ぐことになる。

 もう一つのポイントとしては無記名で書かせることだ。無記名は一見無責任な投票になると思われがちだが、僕の感覚では実は違う、生徒は後から自分が誰の名前を書いたのかを周りの友達に知られるのを嫌がることが多かった。
 記名があると派閥のボスに尋ねられた時に、あとでそれがばれて何かしらの被害をこうむるのではと考え、ボスを意識した投票行動に陥る気がしていた。無記名投票はこのつまらない縛りを解いてやるのに役立つのだ。

3 投票結果を全員の前で発表し、男女3名ずつの「学級委員候補」を発表する。

  選ばれた3人には
「この投票の経緯は君たちも見てきたはずだ、無責任な投票はない、君たちはクラスの異性から信頼されているのだ」
 
 この言葉で候補者は安心感を持つ、異性からの推薦はプライドもくすぐるようだ。また、自分たちの誰かがやらねばならぬという覚悟というか責任感が生まれる。教師の方便にも聞こえるが信頼された生徒であることは真実である。

 残りの生徒たちには
「君たちが責任をもって選んだ人たちだ、しっかりした推薦をありがとう。同時に誰が学級委員になっても選んだ責任として協力することを約束しほしい、挙手をもって確認させてくれ」

 ここまで言って約束できないと手を挙げない者はよっぽどの変わり者かよっぽどのジャイアンだけだ。自分の経験上、ほぼ全員が手を挙げてくれた。100%全員でなくてもいいのだ、ほぼ全員が約束すれば、候補者は安心して立候補ができる。

4 男女それぞれを廊下に出し、立候補を待つ。

 最後は立候補、ここがポイントである。ここまでは選ばれた生徒本人の意思が入っていない。最後には自主性、積極性がほしい。ここまで立候補しやすい環境を作ってやって、それでも手を挙げられないのでは現実的にクラスをまとめるのは無理である。仲間の信頼はあっても学級委員として必要な資質に欠けると判断できる。

 事前の候補を3人にしておくこともポイントだ。1人だけの選出だとその子に自主性が芽生えなかったり、性格が極端に弱気だったりするとそこで行き詰ってしまう。だからこその3人なのだ、ここで自ら手を挙げた子こそが学級委員に最もふさわしい。たとえその子が投票では3位であったとしてもだ。

 6人を廊下に出して立候補を待つことも手を挙げやすくするお膳立てになる。クラス全員の前での名乗り上げは勇気も要る、中学生はとてもナイーブなのだ。そしてここでは粘り強く待つ。少し時間はかかっても男女どちらかが手を挙げれば、もう片方はほどなく決まる。そして、残りの二人ずつには学級委員の相談役を頼み、必ず班長を務めさせる。学級委員を決める事だけが目的ではない、大切なのはその後の安定した学級運営である。
 
 僕はこの方法を新卒7年目に「発明」(今までもきっとあったんでしょうけど、自分の中ではという事でご容赦を)し、その後の10年間は学級委員の選出に困ったことも失敗したこともなかった。

 ちなみに僕のいた学校の委員会は前期、後期の二期制だったことも幸いだった。年間3回だと緊張感や新鮮味の欠如と人材の枯渇という問題が起きてくるかもしれない。

 以上が僕の 必殺「学級委員選出法」である。
 
 全国の悩める若き先生方、一度お試し下されば幸いです。あとはその時のクラスの様子を見て、臨機応変アレンジを試みてもらいたい。

 心からエールを送ります!

 頑張れ!!
 
 もし、上手くいかなかったら ・・・ 

 その時はゴメンナサイ。






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